不動産投資・運用

不動産投資の売却シミュレーション|税金・手取りの計算方法と早見表を解説

不動産投資(収益物件)の売却シミュレーションとは、売却価格から諸費用・税金・ローン残債を差し引き、手取りを試算することです。投資用不動産はマイホーム(自分や家族が住むための住宅)と異なり、減価償却によって購入価格を下回っても譲渡所得が生じるケースがあり、所有期間によって税率も変わります。

本記事では、譲渡所得税の計算方法や短期・長期の税率、ケース別の数値例、費用の内訳までを整理し、手取りをつかむ考え方を解説します。

不動産投資の売却シミュレーションで押さえる「手取り」の全体像

売却価格・諸費用・税金・ローン残債から手取りを試算する全体像のイメージ
不動産投資の売却では、売れた金額がそのまま手元に残るわけではありません。まず押さえたいのは、手元に残る「手取り」が何で決まるのかという全体像です。結論を先に示し、確認すべき項目を早見表で整理します。
項目 内容
手取り 売却価格 −諸費用 −税金 −ローン残債
売却価格 想定売却価格(査定で把握する)
諸費用 仲介手数料・印紙税・登録免許税・司法書士報酬・ローン繰上返済手数料など
税金 譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)/課税事業者は消費税
ローン残債 売却時点の借入残高

手取りの計算式|売却価格−諸費用−税金−ローン残債

手取りを求める基本の式は、次のとおりです。
手取り = 売却価格 − 諸費用 − 税金 − ローン残債
このうち、諸費用の内訳は「不動産投資の売却でかかる費用・税金の内訳」で、税金の中心となる譲渡所得税は「譲渡所得税の計算方法をシミュレーション」で解説します。ローン残債は売却時点の金融機関の残高で確認できます。

投資用ならではの視点|減価償却・トータル損益で考える

投資用不動産のシミュレーションには、マイホームの売却にはない視点が必要です。一つは減価償却の影響です。建物部分は保有中に減価償却費として費用計上され、累計額が取得費から差し引かれます。そのため、売却価格が購入価格を下回っても、計算上の譲渡所得が生じて課税されるケースがあります。 もう一つは、売却単体の損益だけで成否を判断しない視点です。保有期間中の家賃キャッシュフロー、ローン元本の返済で減った残債、減価償却による節税効果まで含めたトータルで見ると、売却時の数字がマイナスでも投資全体では合理的なケースもあります。 不動産投資の売却益の計算方法や手取り額の考え方について詳しく知りたい方は、「不動産投資の売却益とは?計算方法・税金・手取り額シミュレーションを徹底解説」もあわせてご覧ください。

不動産投資の売却でかかる費用・税金の内訳

仲介手数料・印紙税・登録免許税・繰上返済手数料など売却でかかる費用と税金の内訳のイメージ
手取りを減らす要素を費用と税金に分けて整理します。なお、最も影響しやすい譲渡所得税は次章「譲渡所得税の計算方法をシミュレーション」で詳しく解説します。

仲介手数料|売買価格×3%+6万円+消費税(直接取引なら0円)

仲介会社を通じて売却する場合、成約時に仲介手数料がかかります。売却価格が800万円を超える場合の上限は、法令上(宅地建物取引業法に基づく国土交通省告示)で「売買価格×3%+6万円+消費税」と定められています(800万円以下の場合は、2024年7月施行の特例により最大33万円(税込)となる場合があります)。たとえば売買価格5,000万円なら、上限は約171.6万円(=(5,000万円×3%+6万円)×1.1)となり、諸費用の中でも大きな割合を占めやすい項目です。 一方、買主となる不動産会社と直接取引する場合は、仲介会社が入らず手数料が0円になるケースがあります。手数料の有無だけでなく、実質的な手残りで比較することが大切です。 仲介と買取のどちらが手残りで有利になりやすいかについて詳しく知りたい方は、『投資用マンションの仲介と買取の違いは?「実質的な手残り」で考える本当の選び方』もご覧ください。

印紙税・登録免許税|契約書と抵当権抹消にかかる

売買契約書には、記載金額に応じた印紙税がかかります。不動産譲渡契約書には軽減措置があり、記載金額1,000万円超5,000万円以下なら1万円、5,000万円超1億円以下なら3万円です。この軽減措置は、令和9年(2027年)3月31日までに作成される契約書が対象です(適用期間は今後変動する場合があります)。 また、ローンが残っている場合は、抵当権を抹消する登録免許税がかかります。登録免許税は不動産1個につき1,000円で、区分マンションは土地・建物の2件分=2,000円が目安です。

国税庁 No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置

ローン繰上返済手数料・司法書士報酬|金融機関により異なる

ローンを一括で繰上返済する際には、繰上返済手数料がかかるケースがあります。金額は金融機関やローンの種類により異なり、無料〜数万円程度が中心ですが、残債の1〜2%程度の定率型では高額になる場合もあります。 抵当権抹消登記を司法書士に依頼する場合は、司法書士報酬として1〜2万円程度が目安です。いずれも依頼先によって幅があるため、事前に確認しておくと安心です。

消費税|課税事業者は建物部分の売却に納税義務

個人が投資用不動産を売却する場合、免税事業者であれば、売却代金そのものには原則として消費税はかかりません。一方、前々年(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えるなど課税事業者に該当する場合は、建物部分の売却が課税売上となり、消費税の納税義務が生じることがあります。土地部分の譲渡は非課税です。 自分が課税事業者に該当するか不明な場合は、税理士等に確認しておくと安心です。

譲渡所得税の計算方法をシミュレーション

計算式・所有期間の判定・税率から譲渡所得税を求める手順のイメージ
手取りに最も影響しやすい譲渡所得税について、その決まり方を段階的に解説します。

計算式|譲渡所得=売却価格−(取得費−減価償却費累計)−譲渡費用

譲渡所得税は、次の3つのステップで求めます。

【ステップ1】譲渡所得を算出する

譲渡所得 = 売却価格 − 取得費 − 譲渡費用
取得費は「購入価格+購入時の諸費用」から建物部分の減価償却費の累計額を差し引いた金額です。長期保有ほど累計が大きくなり取得費が小さくなるため、譲渡所得が膨らみやすくなります。

【ステップ2】所有期間を判定する

売却した年の1月1日時点の所有期間で、短期譲渡(5年以下)か長期譲渡(5年超)かを判定します。

【ステップ3】税額を算出する

譲渡所得税 = 譲渡所得 × 税率(判定した区分に応じた税率を掛けて税額を求めます)

国税庁 No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)

税率|短期39.63%・長期20.315%(いわゆる5年ルール)

税率は、売却した年の1月1日時点の所有期間で大きく変わります。所有期間が5年以下の短期譲渡と、5年超の長期譲渡では、税率が約2倍異なります。
区分 所有期間(売却年の1月1日時点) 税率 内訳(所得税+住民税)
短期譲渡所得 5年以下 39.63% 所得税30.63%+住民税9%(復興特別所得税を含む)
長期譲渡所得 5年超 20.315% 所得税15.315%+住民税5%(復興特別所得税を含む)
同じ譲渡所得でも、短期か長期かは、売り時を考えるうえで重要なポイントとなります。 投資用マンションを何年目に売るのが最適かについて詳しく知りたい方は、「投資用マンションの売却タイミングはいつが正解?何年目に売るのが最適かを解説」もあわせてご覧ください。

国税庁 No.3211 短期譲渡所得の税額の計算国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算

取得費が分からないときは概算取得費5%ルールを適用する

購入時の売買契約書を紛失し、取得費が分からない場合は、売却価格の5%を取得費とみなす「概算取得費」を使えます。ただし、実際の取得費が売却価格の5%より高いケースでは、概算取得費を使うと取得費が実額より低くなり、譲渡所得が大きくなって税負担が増えやすくなります。購入時の契約書や領収書は、できるだけ保管しておくことが大切です。契約書が見当たらない場合は、購入時の不動産会社やローンを利用した銀行に問い合わせ、通帳履歴等を遡る方法もあります。

国税庁 No.3258 取得費が分からないとき

【ケース別】不動産投資の売却シミュレーション

利益が出るケース・ローン残債が残るケース・損失が出るケース別の売却シミュレーションのイメージ
ここからは、前提条件を置いた具体的な数値例で、手取りと税額のイメージをつかみます。以下の数値は、あくまで単純化したモデルケースです。実際の手取り・税額は、取得費・減価償却累計・譲渡費用・所有期間・ローン残債・税制の適用状況等により異なります。なお、減価償却費は定額法・平成19年4月以降の取得を前提に試算しており、取得時期によっては計算方法や金額が異なる場合があります。

利益が出るケース|減価償却で譲渡所得が膨らむ例

【前提条件】購入価格5,000万円(うち建物3,000万円)/RC造/所有15年(長期譲渡)/売却価格5,500万円/譲渡費用170万円 建物3,000万円をRC造(法定耐用年数47年・定額法)で15年償却すると、減価償却費の累計は約990万円です。これを取得費から差し引くと、譲渡所得は次のとおりです。
譲渡所得 = 5,500万円 −(5,000万円 − 990万円)− 170万円 = 約1,320万円
長期譲渡の税額は、1,320万円 × 20.315% = 約268万円と試算できます。売買差額は500万円ですが、減価償却の影響で課税対象は約1,320万円と差額より大きくなる点がポイントです。

ローン残債が残るケース|手取り=売却価格−諸費用−税金−残債で試算

【前提条件】利益が出るケースと同じ物件(売却価格5,500万円/譲渡費用170万円/長期税額 約268万円)/ローン残債3,000万円
手取り = 5,500万円 − 170万円 − 268万円 − 3,000万円 = 約2,062万円
譲渡益が出ていても、残債を返済すると手元に残る現金は大きく目減りします。ローン残債が売却価格を上回る「オーバーローン」では、返済のために自己資金の持ち出しが必要になる場合があります。試算の際は、売却時点のローン残債を確認しておきましょう。

損失が出るケース|税金は0円だが損益通算に制限

【前提条件】購入価格3,000万円(うち建物1,800万円)/RC造/所有20年(長期譲渡)/売却価格2,000万円/譲渡費用60万円 建物1,800万円をRC造で20年償却すると、減価償却費の累計は約792万円です。取得費は3,000万円 − 792万円 = 約2,208万円で、譲渡所得は次のとおりです。
譲渡所得 = 2,000万円 − 2,208万円 − 60万円 = 約 −268万円
譲渡所得がマイナスのため、譲渡所得税は0円です。ただし、投資用(収益物件)の譲渡損失は、同じ年に別の不動産を売却して得た譲渡益とは相殺(損益通算)できますが、給与所得や家賃収入(不動産所得)とは原則として損益通算できません(一定の要件を満たすマイホームの譲渡損失とは異なります)。また、印紙税や登録免許税など、利益の有無にかかわらず発生する費用は残ります。

所有期間が「短期」と「長期」で税額はどれだけ変わるか

同じ譲渡所得でも、短期譲渡(39.63%)と長期譲渡(20.315%)では税額が約2倍変わります。たとえば譲渡所得1,000万円なら、短期は約396万円、長期は約203万円で、差は約193万円です。売却年の1月1日時点で5年超かどうかが分かれ目となり、売却時期の重要な判断材料になります。

手取りを増やす節税とシミュレーションの精度を高めるコツ

取得費・譲渡費用の計上や売り時の判断で手取りを増やし試算の精度を高めるイメージ
試算の精度を上げつつ、手取りを多く残すための視点を整理します。

取得費・譲渡費用を漏れなく計上する

譲渡所得は「売却価格 − 取得費 − 譲渡費用」で決まるため、両者を漏れなく計上できれば譲渡所得を圧縮できます。取得費には購入価格のほか購入時の仲介手数料・登録免許税・不動産取得税などが、譲渡費用には売却時の仲介手数料・印紙税・測量費などが含まれます。正しく計上するために、購入時・売却時の領収書や契約書を保管しておきましょう。

国税庁 No.3255 譲渡費用となるもの

長期譲渡・デッドクロス・買換え特例で売り時を判断

売り時を考える際は、税率が下がる長期譲渡のタイミングが一つの目安になります。所有期間が売却年の1月1日時点で5年を超えると、税率が短期の39.63%から長期の20.315%へ切り替わります。 ただし、売り時の判断材料は5年超の節目だけではありません。所有から10年・15年・20年以内といった年数の節目も、減価償却の残りやローン返済の進み具合、出口戦略を見直すタイミングとして、売却を検討する一つの契機になり得ます。 とくに、減価償却費をローンの元本返済額が上回る「デッドクロス」を迎えると、帳簿上は利益が出ていても資金繰りが厳しくなりやすく、売却を検討する材料になります。また、一定の要件を満たす事業用資産の買換え特例を使える場合もあります。これらの特例は要件が細かく、適用の可否は個別事情で変わるため、税理士等の専門家に確認しながら進めるのがおすすめです。 投資用マンションの売却にかかる税金や節税のポイントについてさらに詳しく知りたい方は、「投資用マンションの売却にかかる税金はいくら?2026年の最新ルールと節税・確定申告のポイントを解説」もあわせてご覧ください。

売却翌年の確定申告・住民税に備える

譲渡所得が出た場合は、原則として売却の翌年に確定申告が必要です。期間は原則として翌年2月16日から3月15日まで(年により変動する場合があります)です。譲渡所得にかかる住民税は確定申告の内容をもとに翌年度から課税されるため、納税資金を残しておくと安心です。 確定申告に必要な書類や書き方、期限について詳しく知りたい方は、「投資マンションの売却後に確定申告は必要?書類・書き方・期限を初心者向けに徹底解説」もあわせてご覧ください。

シミュレーションの第一歩は「今いくらで売れるか」を把握すること

WEB査定で今いくらで売れるかを把握することがシミュレーションの第一歩になるイメージ
正確な手取りの試算には、出発点となる「想定売却価格」が欠かせません。まずは、お持ちの投資用マンションが今いくらで売れそうかの目安をつかむことが第一歩です。

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不動産投資の売却シミュレーションに関するよくある質問

不動産投資の売却シミュレーションに関するよくある質問のイメージ
最後に、不動産投資の売却シミュレーションに関する、よくある質問をまとめました。
Q売却益(利益)が出なくても税金はかかりますか?
A 譲渡所得がマイナスなら譲渡所得税はかかりません。ただし、投資用不動産は減価償却で取得費が下がるため、購入価格を下回る売却でも計算上の譲渡所得が生じて課税されることがあります。印紙税・登録免許税は利益の有無にかかわらず発生します。
Q「5年ルール」とは何ですか?
A 売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下か5年超かで、譲渡所得税の税率が変わる仕組みを一般に「5年ルール」と呼びます。5年以下は短期譲渡で39.63%、5年超は長期譲渡で20.315%です。購入日から単純に5年ではなく、売却年の1月1日が基準となる点に注意しましょう。
Qエクセルや無料ツールでも正確に計算できますか?
A おおよその目安の把握には役立ちます。ただし、減価償却費の累計額や特例の適用可否など個別の事情で税額は変わります。正確な試算や確定申告にあたっては、税理士など専門家にご相談ください。

まとめ

不動産投資の売却シミュレーションのまとめのイメージ
不動産投資の売却シミュレーションでは、手取り=売却価格−諸費用−税金−ローン残債で試算するのが基本です。投資用不動産はマイホームと異なり、減価償却によって購入価格を下回っても譲渡所得が生じ、課税に注意が必要です。税率は売却年の1月1日時点の所有期間で判定し、短期と長期で約2倍変わります。まずは想定売却価格を把握することから始めましょう。

【免責表記】本コラムは情報提供を目的としたものであり、特定の不動産の売買・投資を推奨するものではありません。税制・法令・市況は2026年7月時点の情報に基づいており、今後変動・改正される可能性があります。実際のお取引・税務申告にあたっては、専門家にご相談ください。

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